DX推進に必要なデータ活用とは?企業が抱える課題点や取り組み事例など詳しく解説
DXを推進するには、社内に蓄積されているあらゆるデータの活用が不可欠です。そこでこの記事では、DXの定義や、その重要性、DX推進におけるデータの活用方法、さらにDXの推進にデータを活用した企業の事例についても紹介します。ぜひ参考にしてください。
目次
DXとデータ活用の違いとは
DXとデータ活用は、一見似ている考え方のようにも思えますが、実際には異なる概念です。そこで、両者がどのように異なっているのかを押さえるために、まずはDXの定義やデータ活用の意味、DXとデータ活用の関係性などについて解説します。
経済産業省によるDXの定義と重要性
経済産業省は、DXを『企業がデータとデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革するとともに、競争上の優位性を確保すること』と定義しています。
つまり、社内のデータ活用を推進したり、デジタル技術の導入によってシステムを整備したりして、従来のビジネスモデルを変革し、新しい価値をもたらすことがDXの目的です。
また、新たな価値の創出によって市場における競争力を高めて、競合他社に負けない組織づくりを行うことも求められます。
2019年7月に経済産業省がまとめた『DX 推進指標とそのガイダンス』によれば、DXによって実現すべき要素として、スピーディーな変化への対応力が挙げられています。DX推進によって経営判断と施策実行のスピードを向上させ、速やかに変化へ対応できる組織作りを進めることが大切です。
データ活用の意味
厳密に言えば、データ活用という言葉に明確な定義はありません。しかし、業務上でデータを活用することがデータ活用の一般的な意味として捉えられています。
社内には顧客情報や売上データ、営業データなど、さまざまな形式のデータが蓄積されています。これらのデータを統合的に管理・分析して、今後の経営判断に活かしていくことが、データ活用の大きな目的です。
データ活用は一回きりのものではなく、継続的に実施し、その時々の結果に合わせて施策を柔軟に変化させていくことが求められます。データ活用を行うことで、意思決定のデータをいつでも参照・分析することが可能になります。
DXとデータ活用の関係性
DXとデータ活用は異なる概念ですが、双方に深い関連性があります。
前述の通り、DXはデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、新たな価値を創出することです。一方のデータ活用は、社内のデータを管理・分析し、今後の経営判断に活かすことを意味します。つまり、データが活用できる環境を整えることで、DXの実現につなげられるということです。
このような関係性から、DXを実現するためにはデータ活用が必須=データ活用とDXは同じものであるという誤った認識が広がりやすくなっていると考えられます。
実際には、データ活用はDXを実現するための手段のひとつであり、DXそのものとは異なる考え方であることを押さえておきましょう。
DX推進で活用できるデータの種類
DX推進において活用できるデータには、さまざまな種類があります。一例として、以下のようなデータを活用できます。
- 経理データ
- 顧客データ
- POSデータ
- 業務日報
- 販売管理データ
- 在庫データ
- Webサイトの解析データ
経理データを活用することで、自社の経営状況の推移を可視化でき、今後の経営方針を定めやすくなります。顧客データやPOSデータ、販売管理データは、今後のマーケティング活動の方向性を明らかにするうえで活用が可能です。
また、在庫データを分析することで、適切な仕入れ数を見極め、過剰在庫の発生や販売機会の損失を防止できます。他にも、業務日報を分析して部門が抱えている課題を明らかにしたり、Webサイトの解析データから顧客の興味・関心を導き出して、新商品の開発に活かしたりする活用方法が考えられます。
DX推進に上手くデータを活用できない企業の課題点
DXを推進するにあたって上手くデータを活用できていない企業の主な課題点として以下の内容が考えられます。
- データ活用に対する十分な投資が得られない
- データ分析に適したデータを収集できていない
- データ活用を担えるデジタル人材が定着しない
そこで、DX推進につまずきやすい企業の3つの課題点について詳しく解説します。
課題1.データ活用に対する投資が得られない
有効なデータ活用を行うためには、分析に適したデータの収集や、集めたデータを分析できる環境の整備、データ活用に優れた人材の教育など、さまざまな投資を行う必要があります。
例えば、DX推進のためにデータ活用を始めることを現場に命じただけでは、必要なデータや人材が揃っておらず失敗に終わってしまう可能性は高いでしょう。
また、DX推進によって得られる費用対効果を経営層が十分に検証できないことにより、現場でDX推進の重要性を実感していても、データ活用に対する十分な初期投資を得られないケースも少なくありません。DX推進を実現するためには、データ活用における自社の課題を明らかにしたうえで費用対効果を検証し、適切な投資を行うことが求められます。
課題2.データ分析に適したデータを収集できていない
DX推進の効果が十分に表れている企業では、目的に合わせて必要なデータを洗い出し、デジタル化していくことに成功しています。適切なデータを入手し、入手したデータを基に正しい分析ができる環境を根付かせる仕組みを構築しているのです。
また、得られた分析結果を施策に活かし、売上向上や顧客満足度向上などの具体的な成果に結びつけることで、データ分析をさらに活発化させるといった好循環を生み出しています。
データ分析を成功させている企業は、顧客行動のモニタリングを行っている割合が高い傾向にあります。例えば、蓄積された顧客の購買データを分析することで、顧客の行動から興味・関心を導き出し、個人の趣味嗜好に合わせた提案を行うことが可能です。顧客ニーズやビジネス市場の変化に対応できる適切なデータ分析は、新たな価値や新規事業の創出にもつながります。
課題3.データ活用を担うデジタル人材が定着しない
自社内に十分なデータが蓄積されていたとしても、データ活用を担うデジタル人材が不足していることによって、DX推進に取りかかれていない企業は少なくありません。
近年では国内のあらゆる企業でDX推進やデータ活用の重要性が認識されつつあり、さまざまな業種・業態でデジタル人材が求められています。そのため、デジタル人材は需要に対して供給が不足しており、すぐに採用しようとしても高いスキルと経験を持った人材を確保することが難しい状況です。
有用なデジタル人材を雇用するためには、デジタル人材のキャリアパスを描きやすくしたり、人員を適材適所に配置するための組織風土を醸成したりする必要があります。外部からのデジタル人材の採用が難しい場合は、社内の人材を育成する方法も選択肢のひとつです。
社内の人材を育成する場合でも、育成後のキャリアパスや組織体制を整備することで、早期離職を防止できます。
DX推進のためにデータを活用する方法とポイント
DX推進を成功させるためには、自社内に存在するデータを整理・把握し、効果的に活用する仕組みづくりが重要です。ここでは、DX推進のためにデータを活用する方法とポイントについて解説します。
今あるデータを把握し整理する
DX推進に取り組む際は、最初にデータの整理を行います。社内のデータを有効活用するためには、異なる場所に保存されているデータを集約し、系統立てて分類し、データ活用の土台を作る事が重要です。
社内にどのようなデータが存在しているのかを把握しておかなければ、データをどういった分析に活用できるのかも明らかになりません。データの整理と把握は、データ活用の第一歩ともいえるでしょう。
データを可視化して分析を行う
データの整理と把握が完了したら、社内に存在するデータの可視化を進めていきます。可視化の方法は、数値情報をグラフやレポートなどにまとめて出力するなどの形がよく用いられます。
可視化されたデータを用いて分析を行い、具体的な数値を明らかにすることで、より効果の高いマーケティング戦略を実行できます。例えば、商品Aの売上は、雨の日になると晴れの日に比べて平均10%減少するといった分析結果が出た場合、雨の日に使えるクーポンを配布して、購入意欲を促すなどの施策を実行できます。
このように、データの傾向を明らかにして具体的な対策につなげることが、DXの目的のひとつです。
使用するデータは統一する
社内で使用するデータは、全社的に形式を統一することが大切です。全社で形式が統一されていないと、例えばA部門とB部門で扱っているデータ形式が異なるため、統合的なデータ分析を行えず、有力な分析結果を導き出せなくなるなどの弊害が起こりやすくなります。
また、一人ひとりが自由にデータを入力することによっても、データ分析に支障をきたす場合があります。システムを導入したり、社内ルールを徹底したりして、入力形式を統一することも重要です。
活用するデータの精度を確認する
いかなるデータにも誤差は生じますが、分析に活用するデータのサンプル数が少ないとデータの誤差は大きくなります。誤差を最小限に抑えることを意識し、できるだけ多くのサンプルを集めることが大切です。
また、分析するデータには精度が確かなものを利用することが求められます。精度が低いデータを分析に使用すると、正しい分析結果が得られず、誤った分析に基づいて効果の低い施策を実行してしまうリスクが高まるためです。
DX促進にデータを上手く活用するには、多くのサンプルを集めると同時に、活用するデータの精度を確認することが重要です。
データを連携できる仕組みを整備する
より効果的なデータ活用を行い、DX推進に結びつけるためには、データを全社的に連携できる仕組みづくりが重要です。社内のデータを統合的に分析できれば、有用な分析結果が得られ、効果の高い施策を実行することにつながります。
データを連携できる仕組みを整備するために、例えば、基幹システムを統合的に管理するためのERPの導入が検討されます。ERPは、人事、財務・会計、購買管理、販売管理、生産管理、在庫管理などの複数のシステムを1つのパッケージにまとめたもので、データをリアルタイムに連携・分析できる点が特徴です。
データ活用でDX推進に取り組んでいる企業の事例
企業の成功事例を参考にすることで、自社がDXを推進する際のアイディアが浮かびやすくなります。ここでは、データ活用でDX推進に取り組んでいる企業の事例を2つ紹介します。
1.製造業の事例
株式会社カーメイトでは、アンケート情報を効率よく活用したい、企業と顧客の双方向でのコミュニケーションを目指したいという2つの課題を抱えていました。
当時は製品パッケージに封入したハガキを頼りにアンケートを収集していましたが、製品カテゴリを超えた分析・活用が難しいことや、顧客との継続的なコミュニケーションができない点を改善したいと考えていたのです。
そこで、製品のパッケージにQRコードを印刷し、愛用者登録や保証登録を行うためのWebフォームへ誘導、そこからアンケートを入力してもらう方式に切り替えました。これによって複数の商品を購入した場合でも、顧客一人ひとりに紐づくデータが保管できるようになり、製品カテゴリをまたいだ分析ができるようになりました。
2.不動産業の事例
阪急阪神不動産株式会社は、分譲マンションの販売を促進するための広告を、チラシや冊子、Web、交通広告など、さまざまな媒体に出稿しています。
しかし、これらの広告効果を全社で統合的に分析するための仕組みがなく、各代理店が個別にプロモーションの成果を報告していたため、どの広告が高い効果をもたらしているのか判断できない状況に置かれていたのです。
そこで、顧客管理システムのSynergy!とGoogle Analyticsを連携し、Webの回遊情報と商談情報を紐づけて、広告効果の測定を実施しました。これによって、どの広告媒体が高い効果をもたらしているのかが分かりやすくなり、広告の最適な予算配分を行い、効率的に集客することに成功しています。
DX推進にはデータを活用できるデジタル人材の育成が鍵
DXの推進には、社内のデータを効果的に活用し、迅速な経営判断を行える環境の整備が欠かせません。そのためには、分析に適したデータを集めるだけでなく、データ活用を担えるデジタル人材の育成が鍵になります。
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