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中小企業にDXが必要な理由とは?DX推進を成功させる4ステップと事例

人材不足や働き方改革への対処は、多くの中堅・中小企業にとって重要な課題となっています。経営上のさまざまな困難が立ちはだかる中、コスト削減や顧客ロイヤリティの向上も欠かせない状況において、デジタル技術を活用したDX推進は多くの企業にとって喫緊の課題になっているといえるでしょう。

本記事では、中小企業にDXが必要な理由やDX推進を成功させる4ステップ、実際に中堅・中小企業がDXに取り組んだ成功事例などについて解説します。

DXの定義

経済産業省が公開している「中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き」によれば、DX(デジタルトランスフォーメーション)は下記のように定義されています。

 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

引用:中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き│経済産業省

つまり、DXとは単にデジタル技術を導入するだけでなく、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業風土の変革を促し、顧客に新たな価値をもたらすことを目的としています。

中堅・中小企業にDXが必要な理由

中堅・中小企業にDXが必要な理由には、業務の属人化や人材不足に伴う市場での競合有意性の損失や、業務効率化、働き方改革の機運の高まりなど、さまざまなものがあります。ここでは、特に重要な8つの理由について、詳しく解説します。

1.業務の属人化

DX推進が進んでいない多くの中小企業では、部門や業務単位で独自のシステムを導入してきたために、ブラックボックス化が進み、システムの全体像が不透明になっているケースが多々あります。

このような状況下では、担当者に業務が依存しやすく、独自の運用プロセスが確立して属人化が進行します。システムのブラックボックス化によって全体像が分からない状況は、DXの必要性を認識していても、DX推進を難しくする大きな要因のひとつです。

属人化を解消するためには、全社的にシステムを統合してデータ共有を推し進め、ブラックボックス化を解消する必要があります。

2.人材不足

近年では、労働人口の減少に伴って人材不足が深刻化しています。従業員の高齢化が進んでいる中小企業も多く、定年退職などで既存システムの担当者が現場を離れると、運用ノウハウがうまく引き継がれないことも少なくありません。

前述のような属人化が進行している現場においては、担当者が異動・退職することによって業務の進行に重大な影響を及ぼすこともあるため、システムの保守を担当できる人材の確保が求められます。DXを推進することで、現場全体のシステムの透明性を確保し、保守人材の確保を容易にします。

3.市場から遅れを取る

属人化や人材不足を解消できないままシステム運用を続けていけば、市場における競争力を失い、大きな経済損失につながる可能性があります。

経済産業省が公開している「DXレポート」では、「2025年の崖」という問題について言及しています。2025年の崖とは、現状のまま多くの企業でDXが適切に推進されない場合、2025年以降に最大12兆円もの経済損失が発生する、という問題です。この数値は、現状の経済損失の約3倍にあたります。

企業は2025年の崖による経済損失を回避するために、DXを推進してブラックボックス化しているシステムを最新のシステムに入れ替えて、データ活用をスムーズに行える体制を整えることが求められます。

DXの推進がスムーズに進まなければ、変化が目まぐるしい市場に遅れを取り、デジタル社会における市場競争から脱落してしまう可能性が高まるため、注意が必要です。

4.業務効率化

DXの推進は、業務効率化を行う上でも重要です。DXによってデジタル技術を取り入れることで、これまで人の手で行っていた業務を自動化できます。RPAの導入による定型業務の自動化などは、DX推進の一例といえるでしょう。

また、DX推進の過程で現状の業務プロセスを詳しく調査することで、不要であったり非効率だったりする業務が可視化されます。業務プロセスの見直しにより、人員配置の適正化やプロセスの効率化を図ることが可能です。

他にも、データ活用が容易になり、部門間の連携をスムーズにする効果が期待できます。

5.働き方改革

DX推進は、働き方改革とも深く関係しています。働き方改革においては、労働者の負担を軽減するとともに、多様な働き方を実現できる環境を整えることが重要です。DX推進によってペーパーレス化やデジタル化が進めば、オフィス外から自社システムに接続し、資料を参照できるようになるため、場所を選ばずに業務を行うことが可能になります。

多様な働き方を実現できれば、オフィスで働くことが難しい人でも自宅や近隣の拠点から業務に参画できます。新型コロナウイルスの影響もあり、リモートワークをはじめとした働き方改革は多くの企業で現実的な課題となっています。

6.コスト削減

ブラックボックス化が進んだ古いシステムは、保守を担当できる人材が限られています。そのため、古いシステムを使い続けることは、人材不足だけでなく、保守要員を確保するためのコストが膨らみやすいという課題も抱えています。

このような課題を解決するためには、DXを推進し、最新のシステムを導入して誰でも保守やメンテナンスを行いやすい環境を整えることが大切です。コスト削減によって浮いた予算を他のDXツール導入に充てたり、IT人材の育成に回したりすることで、より効率的にDX推進を進めることにもつながります。

7.顧客ロイヤリティ向上

DX推進によってデータ活用が容易になると、企業は顧客情報をさまざまなマーケティング戦略や意思決定に活かせるようになります。

例えば商品の購入履歴やWebサイトの回遊情報から導き出される興味・関心を参考にすることで、顧客ニーズを詳細に把握し、顧客にとってより有用な商品やサービスを提案できます。これにより、顧客ロイヤリティの向上が期待できるでしょう。

また、DXツールの導入によってデータ活用と業務効率化が進めば、定型業務に割り当てていた時間をコア業務に回し、より生産性の高い業務運営や、新商品・サービスの開発を実現できます。

8.BCP対策

BCP対策を策定する上でも、DX推進は有効です。「事業継続計画」を意味するBCPは、災害やテロ、伝染病などの不慮の事態が起こったときに、可能な限り業務を継続し、業務が停止した場合でも速やかに復旧するための計画を記した指針のことです。

DXツールを導入して業務を自動化できれば、災害時や非常時に業務を継続するための人員を最小限に抑えられるため、一部の従業員が業務を継続できない状態でも、会社全体の業務ストップを避けられる可能性が高まります。

また、リモートワーク環境を整備できていれば、オフィスに出社できない状況でも業務を再開できるため、復旧までの時間を短縮可能です。

中堅・中小企業のDXの進め方

中堅・中小企業においてDXを進めるための手順は、次の4つがあります。

  1. 意思決定
  2. 全体構想・意識改革
  3. 本格推進
  4. DX拡大・実現

上記の手順は、経済産業省が公開している『中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き』に基づくものです。ここでは、DXの4つの進め方について、手引きの内容を詳しく解説します。

参考: 中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き

1.意思決定

DX推進の1つ目のステップは「意思決定」です。このステップでは、経営ビジョンと戦略策定が行われます。トップダウンの意思決定や、企業のパーパス(存在意義)に基づく経営ビジョンを明らかにして、戦略を策定します。その上で、DX推進チームの設置をはじめとした、DX推進に必要な推進体制を整備する必要があります。

2.全体構想・意識改革

続いて、「全体構想・意識改革」のステップです。このステップでは、全社を巻き込んだ変革整備や、データ利用に向けた取り組みを行います。また、経営層や情報システム部門などの一部社員だけに限らず、全社的な協力を受けながら成功事例を創出し、社内全体でDX推進の機運を高めてDXに取り組むことが重要です。

3.本格推進

全体構想と意識改革を終えたら、DXの本格推進に移ります。社内に存在する既存データや新しく収集したデータの分析・活用を行うとともに、データ分析の前提となる業務プロセスの見直しを行いましょう。また、自社にとって新たな価値を生み出すデータ活用体制を整え、理想とするデータ活用を実現するためのシステム構築も進めていきます。

4.DX拡大・実現

最後のステップは、DX拡大と実現です。本格推進したDXを、顧客との接点やサプライチェーン全体に拡大し、変革の展開や顧客への新たな価値の提供を推し進めていきます。また、経営層による大胆な投資や意思決定によって、さらなるDXの拡大を目指します。

失敗なく中小企業DX進めるためのポイント

前述の経済産業省の資料には、意思決定や全体構想などのさまざまな観点から、中小企業が失敗なくDXを進めるためのポイントも記載されています。ここでは、資料の中で紹介されている5つのポイントを紹介します。

1.【意思決定】外部視点による気づきやきっかけ

中堅・中小企業では、大企業に比べてスピード感を持った変革を行いやすい環境にあることが多いといえます。これは、組織が細分化されてそれぞれに役割を担う大企業と比べて、中堅・中小企業では経営者がリーダーシップを発揮しやすい環境にあるためです。

このことから、DXを推進するためには、経営者が明確なビジョンを打ち出したり、強いリーダーシップを持ったりすることが求められます。

他にも、適切な支援者との出会いや、セミナーなどを活用して情報収集を行うことなど、経営者がDXに取り組むきっかけをできるだけ多く持てる環境が、DX推進のためには重要です。

2.【全体構想・意識改革】身近なところからスタート

DXに取り組む際は、できるだけ身近なところや、取りかかりやすいところから始めることが重要です。例えば一部の業務をデジタル化したり、既に収集済みのデータを活用したりすることから始めて、少しずつDX推進のノウハウを蓄積していきましょう。ノウハウの蓄積とともに、DX人材の育成を進めていき、少しずつ前者に取り組みを拡大するのが効果的です。

小さな取り組みを積み重ねて試行錯誤し、改善点を取り入れながら徐々に組織全体のDX推進へと舵を切ることで、より洗練されたDX化を行えるだけでなく、失敗したときの手戻りを最小限に抑えられるというメリットもあります。

3.【DX実現プロセスの全般】外注化も検討

デジタル技術に精通したDX人材の確保は、DXを推進する上で重要です。しかし、限られた人材を運用する中堅・中小企業において、必ずしも社内にデジタル技術に特化した人材を確保できるとは限りません。十分なスキルを持った人材を育成するためには長い時間がかかるため、すぐにDX推進に取り組むことも難しくなるでしょう。

このような場面では、自社だけで人材を確保しようとせず、外注化も検討することが重要です。ITベンダーやITコーディネーターをはじめとした外部機関を有効活用し、社内に不足しているスキルを持った人材を取り入れることで、DXを推進しつつ、人材の育成も並行して行うことが可能になります。

4.【DX実現・拡大】ビジネスモデルや組織文化の変革

DXの最終目的は、新たな製品やサービスを創出し、顧客に新たな価値を提供することにあります。この目的を実現するために、ビジネスモデルや組織文化の変革を進める過程で、組織におけるデジタル技術への理解やデータ活用スキルが向上し、組織全体の「変化への耐性」も高まっていきます。

変化への体制を高めることができれば、市場や顧客ニーズが激しく変化する現代においても、デジタル技術を活用して素早い意思決定を行える企業へと成長できます。DXを推し進めることは、「変化に強い企業風土を醸成することである」ともいえるでしょう。

5.【DXプロセス全般】中長期的な取り組み

DXの推進は、短期的に完了するものではありません。特定のクラウドサービスを導入したり、基幹システムを刷新したりしたからといって、直ちに課題が解決するというものではなく、5年・10年といった中長期的なスパンで変革に取り組むのがDXです。

そのため、経営者がDXを推進する際は、業務プロセスの洗い出しをはじめとした現状把握や、将来の見通しに基づいた課題設定、現場を巻き込んだ解決策の発見など、長い時間とコストをかけて変革に取り組む必要があります。「将来的にどうなりたいか」というビジョンを明確に設定し、長い目で向き合っていくことが重要です。

中堅・中小企業のDXへの取り組みと成功事例

前述の経済産業省が公開している資料の中には、中堅・中小企業におけるDXへの取り組み事例が紹介されています。これからDXに取り組もうとしている方は、方向性を定める上で参考になるでしょう。ここでは、同資料の中から代表して3つの事例を紹介します。

1.株式会社ヒバラコーポレーション(茨城県東海村)

工業塗装を手掛ける株式会社ヒバラコーポレーションでは、粗利益率が低く、設備投資がままならないことや、求人への応募がなく人手不足を解消するための業務効率化が課題となっていました。

そこで、まずは身近な間接業務のデジタル化に取りかかり、スキャナーとプリンターを導入して手作業だった伝票発行業務を大幅に効率化しました。当時はまだパソコンさえ普及していなかった時代であり、同社のこのような取り組みは画期的だったといえます。

このように、早くからデジタル化を推し進めていたヒバラコーポレーションは、現在でもIT化が進んでおり、「技術のデータ化」と「生産管理」に注力しています。デジタル技術によって技術の数値化と塗装に関わる全作業のデータ化が可能になったことで、技術継承を可能にするとともに、コストダウンや誤発注の防止を実現しました。

2.株式会社竹屋旅館(静岡県静岡市)

旅館業を営む株式会社竹屋旅館では、ホテル経営を継続するためには生産性の向上とコスト削減が重要であると考えていましたが、業界において一般的なアウトソーシングを利用する方法では、宿泊清掃業務の生産性向上とコスト削減を図ることが難しい状況にありました。

そこで、同社はデジタル技術を導入して清掃業務を内製化しています。清掃業務の数値化を図り、成果指標を設定するとともに、下記の3点の取り組みを行いました。

  • 労働投入量をデータで測定する
  • 清掃作業がうまい「匠」の業務を動画化して、清掃の手順を可視化・マニュアル化する
  • チャットツールで従業員同士の情報共有を行う

上記の3つの取り組みによって、一部屋あたりの清掃時間削減と、接客品質の向上によるお客様満足度の向上に成功しています。また、アメニティグッズの消費状況を可視化できるようになり、コスト削減にもつながりました。

3.株式会社ハッピー(京都府宇治市)

衣服メンテナンス事業を営む株式会社ハッピーでは、「ケアメンテ」と呼ばれる、クリーニング技術の限界を超えた新しいサービスを提供しています。

ケアメンテは、衣服の高度なメンテナンス技術、DXツールを活用した業務効率化、データ活用によるCX(カスタマーエクスペリエンス)の向上の3つの要素を兼ね備えたサービスです。

同社では、1種類の衣服に対して形状や材質などの情報を150種目・3,000項目に分解し、データベース化を行っています。また、顧客データベースや工場内の工程も一元管理し、社内で統合的なデータ活用を行うことで、高度なサービスを提供できるようになり、一般的なクリーニング単価の約10倍の価格設定であっても、新規顧客やリピーターを多数獲得しています。

中堅・中小企業のDXは身近なところからスタート

業務の属人化や人材不足、働き方改革など、さまざまな観点からDX推進が求められています。「2025年の崖」にも代表されるように、DX推進が進まない企業では、今後、大きな経済損失や競争力の喪失につながる可能性もあるため、早い段階でDXを意識した経営に舵を切ることが求められます。

DXは一朝一夕の取り組みではなく、中長期的な視線で施策を進めていくことが重要です。DX推進のための人材育成が必要な場合は、デジタルマーケティング担当者自走支援サービスの「DX BOOSTER」がおすすめです。社内のDX推進を担うデジタルマーケティング人材の育成を、事業やコンテンツに基づいた最適なカスタムコンテンツによってサポートいたしますので、お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

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